
「おじさん。」
・・・ん。
「お・じ・さ・ん!」
一瞬、自分がどこでなにやってんだか見失った。
店番しながらうたた寝しちまったようだ。
いつのまにか祭りは終わったのか、暗く静かだ。
「ねえ、おじさんったら!」
かわいらしい声のほうを見ると、
ちっちゃなお下げ髪の子どもと目が合った。
「なんだい嬢ちゃん、どれが欲しいんだい?」
「あたしのお面、つくって。」
「え?」
「あたしのお面。」
スカートの端をぴっと引っ張りながら、
いらいらした様子だ。
「おっちゃんはねぇ、つくれねぇんだよ。
ほら、ここに並んでる中から選びな。」
彼女はぷん、とそっぽむいた。
「あたしのお面、ない。」
生意気なガキだ。
「ママにおみやげにしたいのに、あたしの顔がない。」
妙なこという子どもだと思ったが、
ボール紙の切れっ端を出して、お下げ髪の顔を描いてやった。
「ほら、これでいいかい?」
「うーん・・・あんまり似てないけどいいや。」
「きびしいこというなよ、これやるから。」
「ほんと!?」
彼女の目が輝いた。
紙切れに穴を開けて、輪ゴムをとおしてやった。
じっと見入っている。
「ほら、出来上がりだ。
家帰って、母ちゃんに目ンとこくりぬいてもらいな。」
そういいながら差し出すと、
その子は悲しそうな目をしてすぅー、っと消えた。
悪い冗談だろう。
また祭りの喧噪が聞こえてきた。
何組もの家族やカップルが行き交う。
やっぱり、夢でも見てたんだな。
だが、俺の手にはさっき描いた似顔絵が
ぽつりと残っていた。
写真:雨樹一期
文 :RiKiKi


20 June 2008

Latest Comments